Autor: Kyoko Alscher
リセット
このところ雨天続きのドイツ。
日本の梅雨のように雨が続き、とうとう東南部では水害が深刻な問題となりつつある中、我が家といえばとにかく雨上がりを縫うようにして散歩に出かける毎日。
お陰でベランダに設置してある植物用の雨水タンクはすべてが満タンである。
ちょっと日が遡ったとある先日のこと、所用で一日中雨の中ボダイを連れて出かけて帰宅し、疲れ果ててソファの上に泥のように横たわるボダイを見ていて、ふと後ろ足の外側の爪がないことに気がついた。
いや、正確には例のごとく、爪の外側のケラチン層だけ失い、爪の芯の部分が剥き出しになっていた。

ほれ、このとおり。ありゃま。
この爪は実は数週間前にチビラに踏まれて出血していたところでもある。
踏んだチビラには喝を入れておいたが、しかし踏まれて出血したからといって為す術もなく、これまた例によって例のごとく観察しながら放置を決め込んでいたわけで、その痛んだ爪の芯が数週間経って萎縮し、雨水で組織がふやけてケラチン層が剥がれた、というわけだ。
剥き出しになっている芯はすっかり乾燥してしまっている。
それにしても、爪が剥がれた瞬間を見逃してしまった悔しい感ったらありゃしない。(そこか!)
取れた爪を回収できなかったことをチビラも一緒に悔しがっていた。
そういえばもしや、と思いもう一方の内側の爪を見てみる。
もう一方の爪も実は数週間前にどうしてか痛めて出血をしていたのだ。

傷めていたので、切らずにそのまま伸ばしっぱなし。
案の定、爪はぐらついている。

うりうり。

ぴょろーん。
というわけで、採れた、いや、取れた。
取れたケラチン層の下にある芯はもう萎縮して乾燥しきっていた。
なので本犬まったく痛みなし。
それどころかケラチン層が取れても舐めようともしない。
よく見ると、取れた爪の根元にはもう新しい爪が生えてきている。
とりあえず、すっきり。
これで爪がリセットされた。
しかも後ろ足の内外の2本の爪が取れたからといって、別に走りにも影響はない様子。

追いかけっこの相手に8犬身もの差を付け、コンデジで写真撮ってもただの白く流れる物体になるくらい、充分走りは早い。(当社比)
爪がぴょろんと取れた翌日、朝出がけにチビラが玄関先で床の上に落ちている爪を見つけた。
でかした、チビラ!
私が抱いていた悔しい感が一気に解消された。

そんなわけで、4本になりました。
大寒波よ、いつまで居座るのか?
春分の日直前にロシアから大寒波到来のベルリン。
朝から晩まで一気に氷点下の毎日である。
一昨日なんか夜中にマイナス15℃くらい行ったらしく、私は幸いにもマイナス10℃くらいの時に就寝前の散歩を済ますことができた。ラッキー!
この間咲き始めたクロッカスなんかもう、また雪の中だもんね。
でもお陰で快晴、ちょっと気分はいい。
日差しは暖かいんだけど、日陰と風が容赦ない。
瀬戸内の生ぬるい気候で育った体にはあいかわらずちと厳しいのであった。
さて、皆さんにご心配いただいている爪のその後。
SLO疑惑の真っ直中、地道に魚油セラピーは続いている。
贔屓目抜きで明らかに足先を舐める回数は減り、爪もできる限り短く切ったことから引っかかって剥げる可能性が減り、いまのところこれまで通り普通に週数回の森放牧をこなしているが、さらなる生爪剥ぎ事件は起きていない。
よしよし。

爪を下から見ると、芯が萎縮しているのがよく分かる。
爪のケラチン質と芯は剥がれているけれど、まだしっかり根元が固定されているので無理に剥ぐ必要もなく、それよりも剥がれた芯の保護役としてケラチン質は引き続き立派に役に立っている。
ケラチン質と芯の間は空洞で、歩くとストローをひっかくような音がしていたので、ギリギリ芯が出ないくらいまで更に短く剪定。

後ろ足。(剪定前)
散歩の後に数分指先を舐める以外、ほとんど気にしなくなったボダイ。
このまま落ち着いてくれることを願うばかり。

「そんなことよりメシの時間です」
爪 その後

ボダイの爪コレクション、2つに増えました。(手前が新入り)
なんでかというとー...
それは私がまだ日本に行く前、私が不在中にはチビラとボダイに不便をかけるだろうと思いとりあえず行った森の中でチビラが↓こんなところで遊んでいた時のこと。
チビラの側に駆け寄ろうとしたボダイは周りの倒木や枝に躓き、

こんなになった。
爪はぽっきりもげてはおらず、どうやら半分くらいが折れた模様。
放牧中断→帰宅。
あいたたた...
ぽっきりいってないから特に処理する術もなく、んで放置すること約20日。

私の不在中、全身に掃除機をかけられるボダイ。
日本から帰ってきて爪チェックしていたら、折れてた爪がにゅるっと取れた。

舐め舐め後。
取れたて新鮮。

こうなってしまえば本犬もう痛くないらしい。
それにしても問題は、どうしてこうも立て続けに爪がもげるのか?
かといって爪自体が脆くなっている様子もなく、唯一疑いがあるのは自己免疫疾患の対称性爪脱落症または爪異形成症(Symmetric Lupoide Onychodystrophy、通称SLO)。
決定的な病名をゲットするための細胞診などは、もうボダイにとって単なるストレスのような気がするから特にする気はない。
今ある爪をそれぞれ短く切って、せいぜい爪に負荷がかかりづらいようにしながら回復を待とう。
幸いもう若い犬ではなし、バカみたいに駆け回ることも少なくなったことだし。(時々あるけど)
というわけで、とりあえず魚油投与治療開始なり。
もし効果があるのならば、効果が出るには2年くらいかかるようだが、まあ気長にいこう。
試しに抗生物質とかも合わせて投与してみようか。

いやはや、年取ってくるといろいろ出てくるわねぇ。
爪取れた
みなさんの背筋を震撼させた(大げさ)生爪剥ぎ事件から6日目、そろそろ3本足歩行にも慣れてさくさく歩けるようになった頃、ちょっと長めの散歩に出て帰ってきて保護用ビニール袋を取ったら、爪もいっしょにぽろりと取れた。

ぽろり。
ああ、すっきり。

だけど、今度は肉、剥き出し。

中がまるっきり空洞になっていて、ヒトの爪の丸くなった感じがよくわかる。
あとはほれ、この剥き出しになった肉が乾燥して小さくなってくのと同時に、新しい爪がぐいぐい伸びてくれるのを待つだけだ。
それまでの間、この剥き出しになった肉部分をどこかにぶつけて二次災害が起きてはかわいそうなので、散歩には引き続き厚手ビニール袋を巻いてでかけよう。

やだ。
患部を観察しようとしたら、前足を隠された。
ぬぬぬ。
しばらく待っていると

足を舐め出すボダイ。
実は、舐めているのは患部の左前足じゃなくて右後ろ足。
そいえばここもこの間から舐めている。
次はそこか!?その爪なのか?!??
覚悟しておこう。
災難は続くよどこまでも
年が明けたのは覚えてるけど、おかしいな、もう1月が残り1週間もないじゃない。
まだ1月前半気分でいたのに。

突然我が家に登場した犬柄のトイレットペーパー。
4年ぶりくらいにチビラが風邪を引いたのはいいとして、それのおこぼれを私とボダイが貰って、揃いも揃って氷点下の荒野でボダイは超血便だわ、私は熱(38度5分くらいまでは計った)出したまま仕事続行だわ。
その反動で数日間空白のまま時間が過ぎていった。
病気しても誰もフォローしてくれないのが辛い自営業。
休むと休んだだけその後の処理が怖くていつも休めないのも自営業。
私の風邪も快方に向かい、2度目の下痢を乗り越えてようやくボダイが復活し、折しも青天の下2週間ぶりに森へ行った。
来月で12歳のじいちゃんだから、バカみたいに走ることも少なくなったし、そろそろコートを着て放牧@マイナス6度。

(事件発生10分前)
混み合っているであろう週末の森のハイウェイを避け、人気のない道を選んで雪の森散策。
滅多に行き着かない森の中の塔を廻って帰路についたとき、これまでぽてぽて歩きだったボダイにスイッチが入った。
森の起伏をうれしげに下りて上って、ちょっと向こうの方で折り返して私の足元を通り過ぎようとしたとき、ボダイが悲鳴を上げて止まった。
ぶらりと上げられた左前足の下に真っ赤な血がぽたぽた。
また、爪がもげた。
いや、正確には生爪が剥がれた。
ひぃーーー。(書いているだけで痛そう)
そういえばここ数日、左前足の爪をやたらとボダイが舐めていた。
触っても腫れているわけじゃないし、よくよく観察してみると爪の中の方が若干赤みを帯びていて、たぶんどこかにぶつけて爪の芯が痛んでるんだろうな、と思っていた。
ら、とうとう剥がれた。ひぃーーー。
ぽっきりもげるより痛そう。
(以下痛い写真出ますよー)

お約束の傷口写真。

よくわからない方への説明ショット。
爪の芯触ると当然痛い。
触らなくても私が近づいただけで肩がぷるぷるするボダイ。
(絶対何かされると思ってる)
前回みたいに爪がぼっきりもげたんじゃなくて、今回は何か中途半端に生爪剥げた。
かといってうちに麻酔薬ないし、剥げてもくっついている爪をもぎとるわけにはいかない。
まぁいい、しばらくしたら自然に取れるさ。

とりあえず部屋が血だらけにならないように包帯ぐるぐる巻きの刑。

3本足で行った夜の散歩から帰ってきて、リビング入り口で行き倒れるボダイ。
今月はなんかしら災難続きなのであった。
半年ぶりに発作もあったしね。
今度日本に帰ったら厄除けでも祈願してこようっと。
ニューボダイ その2
前回までのあらすじ→★
筋弛緩薬により撃沈したボダイが担架に乗せられて手術室へと移動するのを見届け、私は待合室に戻った。
腫瘍の除去と去勢、2つ合わせて約1時間ちょっとを見込んでおり、その間気持ちが落ち着かないけど、落ち着いたふりをしながら本を読んで待つことにした。
ちょっとでも気持ちが落ち着くように、いまだ読み終わっていないチャールズ皇太子の著書「Harmony」の続きを読もうと思った。
思ってた矢先に、視界の端っこを通り過ぎる犬の陰。
見覚えのある陰と思いきや、なんとシャヤナだった。
シャヤナは私に気づき、うれしそうに尻尾を振った。
以前ちょうどボダイが頻脈でよろけた際にもこの待合室でシャヤナ&リアネとは偶然に出くわしたように、私たちはなんだかそう言う運命にあるようだ。
シャヤナより1秒遅れて飼い主のリアネも私に気づき、私たちは偶然の再会を喜び、そして彼女は改めてアポロの報告をしてくれた。
リアネはアポロの最後の飼い主、せっかく迎え入れることが出来たアポロをたった1週間で亡くしてしまい辛く悲しい思いをしたのだった。
リアネはスマホに残っていた最期のアポロの動画を私に見せてくれた。
肺炎で息が出来ず首を伸ばしてあえぐ姿のアポロを見て、やはり涙が出た。
また悲しい気持ちに襲われた私の手元をシャヤナがクンクン嗅ぎ回りボダイを探していた。
こうしてリアネと話をしていたお陰で1時間は比較的早く過ぎ去ってゆき、そのうちに手術を担当した外科獣医Dr. Lがやってきて、手術がすべて上手く終わったことを告げてくれた。
その後少しして術後のボダイが覚醒室(といってもフロアの一角だけど)に移され、私がようやく呼ばれた。
マットの上に横たわるボダイはまだ静かに眠っていた。
獣医看護のお姉ちゃんが入れてくれたコーヒーを片手に、私はボダイの隣に座ってただなでた。
なでているうちにしばらくして目が開き、そして覚醒期の幻覚によるひ〜ひ〜という情けない嘆きが始まったのだった。
時間とともに徐々に麻酔は切れてゆき、ひ〜ひ〜はあおあおになり、そしてあお〜〜〜〜〜〜〜〜〜んに変わっていった。
「あお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
足はまだおぼつかないけど、気持ちはフッカツ、へたれ全開。
3時間はたっぷり嘆いただろうか。
所長のDr. Sが通り過ぎる度にボダイに同情してくれていた。
嘆きに耳栓しつつ、一番心配だった心臓について「EKG(心電図)観察で教科書に載ってそうな期外収縮の15連発があったのでリドカインをいれた」とDr. Lは教えてくれた。
腫瘍も開けてみると思っていたよりも大きく、収穫物は早速病理検査に出された。
獣医看護のお姉ちゃんは、前歯の裏にあった歯石の除去までサービスしてくれたうえ、バリカンも最小限の範囲に留めてくれたらしく、後肢の長い飾り毛をそのまま残してくれた。
つまんないことかも知れないけれど、こういう細かい配慮が飼い主としてはうれしいわけである。
麻酔の覚醒時に側にいてやれることだって、飼い主心にとてもありがたいだけでなく、診療所側にしてみれば覚醒時の観察を一番良い相手にお願いできるわけだから、それに越したことはない。
覚醒室がフロアの一角にあるのも、ぞんざいに扱われているわけじゃなく、その逆。
スタッフの往来が多く何か異常があればすぐに誰かしらの目に付くというメリットからだ。
とはいえ、本犬はそんなこたぁお構いなしに幻覚にただ酔いしれていたわけだが。
ボダイの後に来たお隣犬は毛玉のような13歳のばあちゃん犬、偶然にも同じような箇所での手術だったらしい。
ともあれ、かくして腫瘍と玉と度肝を抜かれたへたれ犬は、史上最悪のへたれ犬の名にふさわしく診療所の待合室にまでその遠吠えを轟かせ、私はといえば、ボダイが無事に手術を乗り越えた喜びと、そして予定よりも少ない金額の請求にさらなる喜びを受け、降り始めた激しい夕立の中、家に向かって車を走らせた。
家に帰っていつものソファに乗り、ようやくその日の疲れが出てきたのか、うつらうつらと頭を垂れ始めたボダイ。
しばらくしてまたひ〜ひ〜が始まったので、鎮痛剤を飲ませ、ご褒美の犬用ソーセージを腹一杯食べさせたら、それ以来静かに眠り始めた。
明日の朝までこれで眠ってくれればいいのだけど、もし傷口舐めたらしばくぞ。(ー“ー)
それにしてもこれからしばらくの間、毎日の薬の量がとにかく半端じゃない。
抜糸したら絶対解毒してやる。(とかいっているうちにすぐまたワクチン接種しなきゃなのよね)
そんなわけで、生まれ変わったニューボダイ、この先もどうぞよろしく。