ニューボダイ その2

前回までのあらすじ→

筋弛緩薬により撃沈したボダイが担架に乗せられて手術室へと移動するのを見届け、私は待合室に戻った。
腫瘍の除去と去勢、2つ合わせて約1時間ちょっとを見込んでおり、その間気持ちが落ち着かないけど、落ち着いたふりをしながら本を読んで待つことにした。
ちょっとでも気持ちが落ち着くように、いまだ読み終わっていないチャールズ皇太子の著書「Harmony」の続きを読もうと思った。

思ってた矢先に、視界の端っこを通り過ぎる犬の陰。
見覚えのある陰と思いきや、なんとシャヤナだった。
シャヤナは私に気づき、うれしそうに尻尾を振った。
以前ちょうどボダイが頻脈でよろけた際にもこの待合室でシャヤナ&リアネとは偶然に出くわしたように、私たちはなんだかそう言う運命にあるようだ。
シャヤナより1秒遅れて飼い主のリアネも私に気づき、私たちは偶然の再会を喜び、そして彼女は改めてアポロの報告をしてくれた。

リアネはアポロの最後の飼い主、せっかく迎え入れることが出来たアポロをたった1週間で亡くしてしまい辛く悲しい思いをしたのだった。

リアネはスマホに残っていた最期のアポロの動画を私に見せてくれた。
肺炎で息が出来ず首を伸ばしてあえぐ姿のアポロを見て、やはり涙が出た。
また悲しい気持ちに襲われた私の手元をシャヤナがクンクン嗅ぎ回りボダイを探していた。

こうしてリアネと話をしていたお陰で1時間は比較的早く過ぎ去ってゆき、そのうちに手術を担当した外科獣医Dr. Lがやってきて、手術がすべて上手く終わったことを告げてくれた。
その後少しして術後のボダイが覚醒室(といってもフロアの一角だけど)に移され、私がようやく呼ばれた。

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マットの上に横たわるボダイはまだ静かに眠っていた。

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獣医看護のお姉ちゃんが入れてくれたコーヒーを片手に、私はボダイの隣に座ってただなでた。
なでているうちにしばらくして目が開き、そして覚醒期の幻覚によるひ〜ひ〜という情けない嘆きが始まったのだった。

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時間とともに徐々に麻酔は切れてゆき、ひ〜ひ〜はあおあおになり、そしてあお〜〜〜〜〜〜〜〜〜んに変わっていった。

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「あお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」

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足はまだおぼつかないけど、気持ちはフッカツ、へたれ全開。

3時間はたっぷり嘆いただろうか。
所長のDr. Sが通り過ぎる度にボダイに同情してくれていた。

嘆きに耳栓しつつ、一番心配だった心臓について「EKG(心電図)観察で教科書に載ってそうな期外収縮の15連発があったのでリドカインをいれた」とDr. Lは教えてくれた。
腫瘍も開けてみると思っていたよりも大きく、収穫物は早速病理検査に出された。

獣医看護のお姉ちゃんは、前歯の裏にあった歯石の除去までサービスしてくれたうえ、バリカンも最小限の範囲に留めてくれたらしく、後肢の長い飾り毛をそのまま残してくれた。
つまんないことかも知れないけれど、こういう細かい配慮が飼い主としてはうれしいわけである。

麻酔の覚醒時に側にいてやれることだって、飼い主心にとてもありがたいだけでなく、診療所側にしてみれば覚醒時の観察を一番良い相手にお願いできるわけだから、それに越したことはない。
覚醒室がフロアの一角にあるのも、ぞんざいに扱われているわけじゃなく、その逆。
スタッフの往来が多く何か異常があればすぐに誰かしらの目に付くというメリットからだ。

とはいえ、本犬はそんなこたぁお構いなしに幻覚にただ酔いしれていたわけだが。

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ボダイの後に来たお隣犬は毛玉のような13歳のばあちゃん犬、偶然にも同じような箇所での手術だったらしい。

ともあれ、かくして腫瘍と玉と度肝を抜かれたへたれ犬は、史上最悪のへたれ犬の名にふさわしく診療所の待合室にまでその遠吠えを轟かせ、私はといえば、ボダイが無事に手術を乗り越えた喜びと、そして予定よりも少ない金額の請求にさらなる喜びを受け、降り始めた激しい夕立の中、家に向かって車を走らせた。

家に帰っていつものソファに乗り、ようやくその日の疲れが出てきたのか、うつらうつらと頭を垂れ始めたボダイ。
しばらくしてまたひ〜ひ〜が始まったので、鎮痛剤を飲ませ、ご褒美の犬用ソーセージを腹一杯食べさせたら、それ以来静かに眠り始めた。
明日の朝までこれで眠ってくれればいいのだけど、もし傷口舐めたらしばくぞ。(ー“ー)

それにしてもこれからしばらくの間、毎日の薬の量がとにかく半端じゃない。
抜糸したら絶対解毒してやる。(とかいっているうちにすぐまたワクチン接種しなきゃなのよね)

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そんなわけで、生まれ変わったニューボダイ、この先もどうぞよろしく。

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Veröffentlicht in Bodai